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GitHub、DMCAに対して開発者をサポートする独立的な法的支援機関を設立

原文(投稿日:2021/07/29)へのリンク

GitHubは、セクション1201に基いて要求されるDMCA削除要請に対して、スタンフォード・ロー・スクール(Stanford Law School)からの法的支援を開発者に無償提供するプログラムをローンチした。

同社でDeveloper Policyの責任者を務めるMike Linksvayer氏によると、DMCAは複雑であるため、特にオープンソースの開発者たちは、自身の権利を主張することなく、侵害を指摘されたコードをただ単に削除する傾向がある、という。この状況を変えるために、スタンフォード・ロー・スクールのJuelsgaard Intellectual Property and Innovation Clinicに、GitHub Developer Rights Fellowshipを設立した。

100万ドルを資金提供したこのイニシアティブによって、GitHubは、削除通知に対して自身の権利を守る無償のオプションを開発者に提供できるようになる。

現在のGitHub Developers Rights Fellowshipが対象としているのは、ディジタル著作権管理(DRM)など技術的保護手段の迂回に重点を置いた、Digital Millennium Copyright Actのセクション1201に限られているが、可能な部分については、その経験から学んだことを他の状況のために紹介することを検討したい、とLinksvayer氏は述べている。

InfoQは今回、GitHubのDeveloper Policyの責任者であるMike Linksvayer氏と、スタンフォード・ロー・スクールJuelsgaard ClinicディレクタのPhil Malone氏に話を聞くことができた。

InfoQ: まず最初に、いくつかの数字に関して教えてください。GitHubが受けた削除要請の数はいくつで、最終的に著作権侵害を指摘されたコンテンツの再有効化に成功したのはその中の何件なのでしょうか?

Linksvayer: 削除要請を受けた数については報告していませんが、透明性レポート(transparency report)で詳説しているように、昨年は2,000以上のDMCA削除通知を処理しています。

InfoQ: 著作権所有者から著作権侵害を指摘されているのは、どのようなコンテンツなのでしょうか、最も多い侵害請求はどのようなものですか?

Linksvayer: 透明性を確保するために、処理するDMCA削除要請はすべて公開しています

GitHubで処理するDMCA削除要求は、コード以外のコンテンツに関するものが多くなっています。オープンソースライセンスの非準拠に関わる削除通知は比較的まれです。というのも、この種のものは一般的に友好的に解決できるからです。こちらに関しても、詳細は透明性レポートを参照してください。

InfoQ: Developer Defense Fundが設立されていれば開発者の権利を守る上で役に立ったと思われるような、最近の例をいくつか紹介して頂けますか?

Linksvayer: 一般的に言って、保護機能の迂回(circumvention)に基く法的請求は複雑なものがほとんどで、新たな法的問題を伴うことも少なくありません。GitHubがDeveloper Defence Fundを設立して、このようなケースをより広く支援することにしたのは、こうした理由からです。例えば、セキュリティ研究に関連するケース、昔好きだったゲームをプレーしたいファンによるリバースエンジニアリング、ハードウェアをいじり回すための非公式なインターフェースを開発するホビーストなどがあります。

InfoQ: DMCAによる削除がソフトウェアアーティファクトに対して行ってきたことに関して、一般論としてどのように評価していますか?

Malone: Mikeが先ほど言った、オープンソースラインセンスへの非準拠に関するDMCAコード削除が比較的少ないという点については、私も同じ意見です。ですが、DMCA一般がそうであるように、Section 1201を焦点とした削除要求はそれぞれ、性質が大きく異なります。セクション1201の迂回防止制限に実際に違反する、あるいは違反を可能にするコードを対象とした正当なものもありますし、不当な理由でコードプロジェクトを阻止することを目的とした、まったく根拠のない悪用といえるものもあります。ですが大部分は、その中間 — 必ずしも悪意や意図的な悪用を持って送られたのではないが、法的に疑問のある、あるいは見当違いなものです。

残念なことに、DMCA通知を受け取ったソフトウェア開発者は、通知を適切に分析して、自身に権利があるのかどうか、どのように回答すればよいのかといったことを判断するための専門知識やリソースを持ち合わせていないことが多いのです。この団体は、そのような状況に対して適切な対応を取れるように、より多くの情報、リソース、支援を開発者に提供することを目的としています。

InfoQ: 最も望ましい方法、あるいは望ましくない方法は何でしょうか(例えば、自動削除など)?

Malone: 自動削除は、DMCAセクション512による削除では一般的ですが、セクション1210に関してはそれほど一般的ではない方法です。しかしながら、いずれの状況においても、DMCAによる通知と削除が機能する方法としては、重要な問題を引き起こす懸念があります。

一般論として、自動削除は、コードやコンテンツが使用される状況を評価する上で、極めて望ましくない方法です。それが結果的に、多くの場合において、フェアユースやセクション1201のカーブアウトのような著作権例外など、開発者や作成者が自身のコードやコンテンツに対して持つ可能性のある正当性を無視することになるからです。それぞれのケースの状況を調査するループの中に人の判断が入らなければ、状況を考慮しない、法的に正当ではないDMCA通知が頻繁に送られることになります。

InfoQ: 今よりも効果的で、誤用をされないものにするためには、DMCAをどのように変えればよいのでしょうか?

Malone: 不適切なDMA削除通知は、現実的かつ重大な問題です。例えば、際には侵害のないコードやコンテンツに多数の削除要請が送られたり、通知を送った人が法的な執行権を持っていなかったりすることがあります。最悪なのは、一部の人々によって、コード開発プロジェクトにダメージを与えたり、競合相手を損じたり、自分の気に入らない演説などのコンテンツを削除したりするために、削除プロセスが悪用されることです。

現在のDMCAに欠けている最も重要なもののひとつは、このような悪用を止めさせて、法的に不正であると知っている、あるいは知っているべき削除通知の送付を阻止するための、意味のある、強制可能なメカニズムです。

今は、DMCAのセクション512(f)によって、不適切な削除通知を受けた場合には、対象となるコードあるいはコンテンツが著作権違反であるという"故意に著しく偽った"通知を送ったものに対して、損害賠償と弁護士費用を請求することができるのですが、法廷ではセクション512(f)が狭義に解釈されているため、不正な通知をした送信者に責任を負わせたり、意味のある救済措置を取らせるということは、現実的には極めて難しいのです。結果として多くの人たちや企業が、DMCAの誤用によって苦しめていることを気にもかけずに、不適切な削除要求を送り続けているのが現状です。

現実的かつ意味のあるペナルティを課せられるようにセクション512(f)を強化することで、DMCA通知と削除プロセスの悪用に対する真の抑止力を作り出す必要があります。

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