先頃Microsoftは、同社Cloud for Healthcare用Fast Healthcare Interoperability Resource(FHIR) Azure APIの名称を、"Azure Healthcare APIs"に変更すると発表した。それに合わせて、ヘルスケアデータのサポート範囲を拡張し、FHIR経由による患者の健康データ、DICOM経由の医療画像データに加えて、デバイステレメトリをFHIR監視情報に変換するAzure IoT Connector for FHIR (IoT Connector)を通じて収集した医療機器データも対象にする。
2019年10月に同社は、Azure API for FHIRを一般向け(GA)リリースし、ヘルスケアデータの迅速な収集と永続化、管理をクラウド内で可能にした。そして今回、自社の健康データサービスの名称変更と拡張により、複数のデータタイプをFHIRフォーマットで交換できるようにする。さらに、APIを活用することによって、まったく異なるProtected Health Information(PHI)のセットをひとつにまとめ、マシンラーニングや分析、AIといったツールとエンドツーエンドで接続することが可能になる。
Azure Healthcare APIを使って顧客の記録システムからデータを取得して変換し、収集したリアルタイムデータと統合することによって、縦断的な患者記録を作成することができる。さらに、複数の形式の健康データを対象とする共通標準に従った、一貫したデータの永続化が可能になる。以下はAPIを使ってできることだ。
- 非構造化データをText Analystics for Healthのような自然言語処理アルゴリズムにマップすることで、臨床記録やテキストドキュメントから取得したデータにアノテートし、FHIRに構造化して、構造的な臨床データと同時に視覚化できるようにする。
- APIゲートウェイを通じてイメージデータをDICOMフォーマットで取得することにより、DICOMCastテクノロジを使ったイメージからの関連メタデータ取り出しや、FHIR形式の患者記録へのマッピングを行う。
- バイオメトリクス情報をAzure IoT Connector for FHIR経由で取得し、健康のトレンドに関する重要な情報を提供することで、ケアチームによるタイムリな治療介入とリモートケアを可能にする。
- HL7ないしC-CDA形式の臨床記録、メディカルサービスからのデータ、HealthKitやGoogle Fitといったサービス、ゲノムデータベースなどを取得し、変換し、FHIRにマップする。
Azure Healthcare APIに関するMicrosoft Techコミュニティからのさまざまなブログ記事のひとつには、Microsoft HealthシニアプロダクトマーケティングマネージャのLinishya Vaz氏が次のように記している。
Azure Healthcare APIはAzure API for FHIRの進化形です。より多くの種類の健康データがクラウドに転送可能になるだけではありません。Microsoft Cloud for Healthcareを活用して、現実世界のデータを現実世界のエビデンスに変換することによって、改革を推進し、結果として臨床転帰の改善、ヘルスケアのコスト削減を実現するのです。
さらに、Constellation Research Inc.の副社長兼プリンシパルアナリストのHolger Mueller氏は、次のように述べている。
APIは次世代アプリの戦場です。企業にコードを記述させたクラウドベンダには、明るい未来が保証されます。MicrosoftがヘルスケアAPIをローンチするのも、そのような理由からです。ただしその前には、企業がAPIと依存関係自動化の利点を比較し、検討する必要があります。
Azure Healthcare APIはプレビュー版で、現在は無償で使用することができる。各Azure Regionにおける価格や可用性の詳細は、pricing pageに紹介されている。そして最後に、初期のAzure API for FHIRを現在使用しているユーザは、サービス提供を中断されたり、あるいは価格構造を変更されることなく、今後も使用することができる、とMicrosoftは説明している。