Visual Studio 2022は、Microsoftの人気IDE(Integrated Development Environment)の最新バージョンだ。Hot Reloading、デバッグ、コードエディタ、テーマなどに関連して、多くの改良が加えられている。64bitアプリケーションとして提供され、.NET 6をサポートし、複数のGitリポジトリから取得したプロジェクトを同じソリューションに格納することが可能である。
IDEのユーザインタフェースも幅広く改善されており、刷新されたアイコンセットと新フォント"Cascadia Code"が追加されたことにより、明瞭性と可読性が向上している。また、Accesibility Insightsの導入により、プロダクトリリースの前にアクセシビリティ上の問題を検出し、解決することが可能になった。テーマを使った環境のカスタマイズや、複数のPCでの設定の同期も簡単にできる。
Visual Studioは多数の言語とフレームワークをサポートし、複数のエディション — Community、Professional、Enterprise — で提供される。Visual Studioの開発チームはコミュニティ指向の開発プロセスの一環としてカスタマフィードバックを収集しており、それに従ってプロダクトロードマップを決定している。最近のリリースでは、コミュニティからのコントリビューションや意見を数多く取り入れることで、ツールをより現実的なユースケースに適応させている。それを明確に示すのが、今日に至るまで長年にわたって求められていた、64bitのサポートだ。
InfoQはLeslie Richardson氏(プログラムマネージャ、Visual Studio Extensibility & Debugging)らVisual Studio Teamのメンバにインタビューして、今回のリリースに含まれる新機能や改善点について詳しく聞くことにした。
InfoQ: Visual Studio 2022では、開発者の生産性はどのように向上するのでしょうか？Richardson、Harshada Chandrakant Hole(プロダクトマネージャ - Visual Studio)、Mile Dumont(プログラムマネージャ - .NET and Visual Studio Team)、Grace Taylor(プログラムマネージャ II - Developer Tools): 全体として、生産性が大幅に向上しています。例えば、
- Hot Reloadが大きく改善されました。マネージド.NET、ネイティブC++のいずれでも動作します。開発中にアプリケーションの再起動をする必要がなくなることにより、コード編集時間の短縮が可能になります。Hot Reloadの改善に関する最新情報はリリースノートで、今後の改善事項についてはバックログで、それぞれ確認することができます。
- ファイルスコープのネームスペースなど、C# 10.0とナビゲーションに関連した、新たなリファクタリング。
- "Force Run to Click"などの新たなデバッグ機能。"Force Run to Click"は、選択したカーソル位置に到達するまで、途中のブレークポイントを無視してデバッガを実行させる機能です。その他、ソリューションエクスプローラ内の外部ソースノード、"Attach to Process"ダイアログに対する多数の詳細な変更、新しいコンテキストメニューによるブレークポイントエクスペリエンスのアップデート、テンポラリブレークポイントおよび従属(dependent)ブレークポイントなどがあります。詳細はリリースノートや以下のブログ記事で紹介しています。
- ラインスペーシングの改良など、エディタの機能追加。
- すべての開発者の作業習慣にベストマッチするように、パーソナライゼーション・エクスペリエンスも改善しています。テーマの柔軟性を向上して、VSのテーマをWindows OSのテーマにマッチさせられるようにしました。ワークスペース内のタブの色付けとカスタマイズによるドキュメント管理機能も新たに加えています。その他、近日中に提供される予定の新機能については、ブログ記事でその概要を紹介しています。
InfoQ: 64bitバージョンが用意されたことによって、どのようなメリットがあるのでしょうか？
Richardson: 64bit Visual Studioの大きなメリットは、ロード時間が改善されたことと、アウト・オブ・メモリ例外が大幅に減少したことです。何百というプロジェクトやファイルを抱えるような大規模なソリューションでは、これらは特に顕著です。
InfoQ: IntelliCodeの改善について、詳しく説明して頂けますか？
Mark Wilson-Thomas (プリンシパルプログラムマネージャ - Visual Studio): 最も分かりやすいのは、C#ユーザを対象にした、新しいIntelliCode行補完機能でしょう。詳細についてはこちらでも紹介しています。この新機能によって、コード編集エクスペリエンスの生産性が大幅に向上することを期待しています。
InfoQ: マルチリポジトリGitサポートは、チーム間コラボレーションの上でどのように役立つのでしょう？
Taysser Gherfal (シニアプログラムマネージャ): 当社製品のユーザの中には、異なるGitリポジトリにホストされたプロジェクト間で開発作業をするチームもあると思います。これまではVisual Studioのインスタンスを複数立ち上げるか、あるいは外部のGitツールに頼ってコラボレーションを行う必要がありましたが、Visual Studio 2022のマルチリポジトリサポートを使えば、異なるGitリポジトリにホストされたプロジェクトを持つソリューションとして開発することができます。これによって、Visual Studioを離れることなく、コミットやコラボレーションを行うことが可能になるのです。
InfoQ: リモートテストに関する新たなオプションはありますか？
Kendra Havens (プログラムマネージャ - .NET and Visual Studio Team): あります！ Visual Studio 2022のリモートテストでは、ローカルコンテナ、WSL、任意のSSH接続の他、テストのリモートデバッグも可能になりました。
InfoQ: アプリケーションのメモリ問題の検出に関しては、どのような支援機能があるのでしょうか？
Richardson: Visual Studioにはプロファイルツールのスイートが用意されていて、メモリ診断を支援しています。例えばMemory Usageツールでは、メモリリークや過大なメモリ消費を検出することが可能ですし、最新ツールのDiagnostics Analyzerは、メモリダンプから.NETの一般的な問題を特定するために使用することができます。
InfoQ: Visual Studio 2022は.NET 6に対応していますか？
Dumont: はい、.NET 6.0をサポートしています。
Visual Studio 2022の新機能を試したいのであれば、Community Editionを無償でダウンロードすることができる。Visual Studioを最大限活用することに興味があるならば、Microsoft Docsのdocumentaionセクションを参照するとよいだろう。最新のニュースやIDEに関するハウツーを知るためには、Visual StudioブログとVisual Studio Toolbox showをフォローする必要がある。
チームについて
Visual Studio Teamは、Visual Studioの改善に日々取り組んでいるITスペシャリストのチームである。
- Leslie Richardson氏はVisual Studio Extensibility & Debugging Teamのプログラムマネージャで、全体的な拡張性エクスペリエンスと機能セットの改善に重点を置いている。氏はChannel 9でVisual Studio Toolbox showのホストも務める。
- Harshada Hole氏はVisual Studio Debugger Teamのプログラムマネージャで、より生産的なデバッグエクスペリエンスの開発に尽力している。
- Mika Dumont氏は.NET and Visual Studio Teamのプログラムマネージャで、.NET開発者がVisual Studioによってより生産的になることに主眼を置いている。
- Grace Taylor氏はMicrosoftのプログラムマネージャ IIとして、600万人の開発者のエコシステムを対象とした問題検証と製品構想を担当する。
- Mark Wilson-Thomas氏は Visual Studio IDE Teamのプログラムマネージャとして、Visual Studio Intellicodeを担当している。氏はMicrosoftで15年以上、Visual Studio Editor、Microsoft Office、SQL Server、WPF、Silverlightなどの開発に携わっている。
- Taysser Gherfal氏はMicrosoftのVisual Studio Version Control Teamで開発に従事するシニアプログラムマネージャで、Gitとコードレビューの品質向上のためのチームコラボレーションエクスペリエンスに注力している。
- Kendra Havens氏は、.NET and Visual Studio Teamのプログラムマネージャで、.NETツーリングとテストエクスペリエンスを担当する。氏はChannel 9で、多数のビデオをホストしている。