コーチングは、個人的にも、仕事の上でも、自身の潜在能力について理解し、日々の業務においてその潜在能力を開発する方法を見出す上で有用な手段である。テスタやエンジニアを指導する技術職のMaryam Umar氏にとって、コーチングは大いに役立っている。
品質エンジニアリング部門の責任者を務めるMaryam Umar氏はAgile Testing Days 2021で、テストチームを指導する上でのコーチングの効力について基調講演を行った。
Umar氏は自身について、パーソナルコーチ、フィジカルコーチ(パーソナルトレーナ)、キャリアコーチという、3つのタイプのコーチと一緒に仕事をしている、と述べている。これら3人のコーチはすべて、部門長としての役割を向上させるために氏が継続的に取り組んでいる、氏の生活におけるさまざまな部分の強化を支援してくれているのだ。
Umar氏がパーソナルコーチングとパーソナルトレーニングを始めたのは2019年のことだ。
その頃の私は、自分が生活の中でたくさんのことを一度にやろうとしていることに気付いていました。このアンバランスを起こす原因を特定するために、誰かの支援が必要だと思ったのです。私たちはまず、自分の限界と、それを越えた時に自分がどう反応するのかを探ることにしました。仕事や生活の中においてパーフェクトでなければならない、というストレスが何に起因しているのかについても、いろいろと話し合いました。
パーソナルトレーナに出会ったのも2019年です。目的は単純で、メンタルの強さに直接的に影響する肉体的なスタミナを実現することでした。結果としてこれは、業務が多忙な時のストレス管理に役立っています。
キャリアコーチとの経緯は少し違っている、とUmar氏は説明する。
キャリアコーチと出会ったのは、パンデミック前のリーダシップトレーニングコースの中でした。お互いに良好な関係を築くことができたので、自分のトレーニング予算の一部でもっと先に進んでみよう、と思ったのです。コーチングセッションでは、パフォーマンスレビューを通じてフィードバックを受け取ったり、個人的なキャリア目標をアウトラインとして議論したりしていました。
メンタリングとコーチングは、リーダとしてのUmar氏の日常業務を支援している。
難しい会話や判断を迫られた時などの自分自身の反応や対応が、以前よりもずっとよく分かるようになりました。例えば私は、会話中にパフォーマンス不足の指摘を受けたと感じると、不安を覚えるようになるのです。そこで、ミーティングルームよりもストレスを感じない場所で会話をすることにしました。これは私にとっても、チームメンバにとってもよい結果を生み出しました。自己認識を持つことによって、不安やストレス、過重労働や長時間労働、チームのモラルなどをチェックする、有効なツールを手に入れることができたのです。
コーチングとメンタリングを受けた経験について、Maryam Umar氏にインタビューした。
InfoQ: 品質部門の責任者として仕事を始めた頃、メンタリングやコーチングに期待していたことは何でしたか?
Maryam Umar: 本当のところは、部門の責任者としてコーチを受けるということは、あまり深く考えていませんでした。メンタということばはよく耳にしていたので、管理業務を始めた頃、以前の上司にメンタを依頼するようになったのですが、
そこで気付いたのは、"メンタリング"ということばに対する自分の理解が明確ではなかった、ということでした。どこに役割を求めればよいのか、それに備えるにはどうすればよいのか、などの指導を受けることを期待していたのですが、本当のメンタリングはそうではなく、未経験者に対して、目の前のタスクや役割についてのアドバイスを与えることなのです。
ですから、メンタリングを受けるために、ソフトウェアテスト業界のプロフェッショナルにコンタクトを取る必要がありました。そのような中には、Lisa Crispin氏やIsabel Evans氏、さらには世界中のテストエンジニアのネットワークを通じて知り合った数え切れないほどの人たちがいました。私はメトリクスにも特別な関心があったので、Daniel North氏、Jez Humble氏(DORAプロジェクトの開発に同僚とともに従事していました)らにも連絡を取りました。
コーチングという考えが浮かんだのは、リーダシップのためのコーチングを取り上げたコースに参加した時です。そのコースの教材が、自分のパーソナリティにコーチングの対象になる面があることに気付かせてくれたのです。それを自分のチームで、もっと効果的に作業するために使うことにしました。
InfoQ: ストレス対策や納期とのバランスには、どのようなテクニックを使っているのでしょうか?
Umar: コーチに相談するようにしています。ストレスの状況については、コーチたちといつもオープンに議論します。
パーソナルトレーナは、仕事上の困難な問題に取り組むために必要なエンドルフィンを分泌させるにはフィジカルトレーニングが最適だから、セッションを休まないように助言してくれています。本当に忙しい時には栄養を取ることも忘れてしまうのですが、それもトレーナが教えてくれます :)
正直に言うと、ストレスが高まった時には、パーソナルコーチよりもキャリアコーチに相談することが多くなりました。それというのは、問題に直面した時、パーソナルコーチからすでに指摘されている私の弱点をキャリアコーチと話し合うことで、よい解決法が見つかるからです。状況を説明して、それを分析し、どうすればよりよい対応を考えられるのか議論します。
難しいプロジェクトの中で競合する問題がある場合には、優先度を付けることも非常に大切です。私はいつも、マネージャとチームの両方と、優先度について議論する機会を持つようにしています。短期間に大きな影響を与える可能性のある項目についても、まとめて評価します。その上で、残った項目の進捗について、構造的な形で組織の他のメンバに伝えるようにしているのです。
InfoQ: どんなことを学びましたか?
Umar: 幸運にも、適切なキャリアパスの選択を学ぶことができました。チームを作り、育て上げて、チームメートが自身の強みを見つける手助けをできたことで、大きな達成感を得ています。自分がリーダとして、チームの透明性に注力していることも分かりました。優先順位、再編成、採用判断のいずれにおいてもです。私たちの提言を会社が採用しなかった理由をチームに伝える時には、いつもその誠実さを理解してくれますし、その提言によって利用可能になるリソースを使えるように、一丸となって取り組んでくれます。
InfoQ: 新たにリーダシップの役割を担う技術系の人たちには、どのようなアドバイスをしますか?
Umar: 誰にでも合うアドバイスはありません。自身のレジリエンスを高めること。集中できる時間を確保して、それを続けること。リーダが褒められることは多くありませんが、チームが認められれば、それが自身の成功なのです。
常に謙虚であること。目標に関して柔軟であること。リーダとしての自分を知ることで、目標も変わります。アイデアを出し合ったり、難しい決断を迫られた時に相談できるような、社外ネットワークを作りましょう。