BT

最新技術を追い求めるデベロッパのための情報コミュニティ

寄稿

Topics

地域を選ぶ

InfoQ ホームページ ニュース TSS(Team-set salaries)によるアジャイルチームの公平な個人報酬

TSS(Team-set salaries)によるアジャイルチームの公平な個人報酬

原文(投稿日:2022/02/24)へのリンク

TSS(team-set salaries、チーム一体給与)は、マルチスキルで協調的、かつ自律的なチームの各メンバに対して、公平な報酬を設定することのできる手法である。メンバはそれぞれ、自分自身ではなく、同僚のみを評価する。それによって、給与の決定に関する直接的な発言権が与えられるのだ。

Klaus Wuestefeld氏はLean Agile Exchange 2021で、TSSについて講演した。

TSS(Team Set Salaries)では、業績評価をチームメンバ自らが、"パイを分ける"というゼロサムメタファを使って15分程度で実施する。これはつまり、従来の360レビューのように全員によい評価のみを与えることはできない、ということだ、とWuestefeld氏は説明する。

一部のメンバがパイの多くを獲得すれば、自動的に他のメンバの取り分が少なくなる、ということです。

このような"ゼロサム性"を忌諱とする意見もあるが、それは単に、報酬予算が常に有限である現実を表しているに過ぎないのだ、とWuestefeld氏は言う。

TSSはメンバに対して、ひとつの包括的な質問に答えることで評価を行うように求める。Wuestefeld氏が使う質問は、"他の同僚と比較して、その人が貢献した価値は何か"、というものだ。これを問うことによって、氏のチームでは、あらゆるチームの評価に内在する主観性という問題を、協調的な方法によって解決している。

TSSの結果は、各人がどれだけの報酬"パイ"を得るべきかを、チームの総意として正確に伝えてくれます。"Annはパイの13.6パーセント、Bobは10.2パーセントを得るべきだ"というように、です。従って、チームに与えられる報酬の予算が増えれば、TSSの結果に従って、最もふさわしい人にそれを与えることができるのです。

"マネージャとして、最終的な報酬について意見を述べる必要はありますが、これまで何年間にもわたって、TSSの結果は一貫して公正であったと思っています"、とWuestefeld氏は述べている。"この結果は、各チームの意見を集約したものなのです。"

TSSについて、Klaus Wuestefeld氏にインタビューした。

InfoQ: 従来の評価とはどのように違うのでしょうか?

Klaus Wuestefeld: 従来の360度レビューでは、ともすれば人気コンテストに陥りかねないプロセスの中で、レビューフォームを埋めるのに何時間も費やさなくてはなりません。人は自分に跳ね返ることを恐れて、否定的な評価を正直に下すことには躊躇するので、全体として肯定的な評価の政治的交換になります。

その結果、個々の結果を調整するために、マネージャが非公開の秘密"調整"会議に何日も費やさざるを得なくなるのです。この調整会議によって、透過性は、その命脈を絶たれます。チームの全員、特にマネージャが、従来の業績評価を嫌うのは当然のことでしょう。

InfoQ: TSSを実践するにあたり、これまでどのような課題があって、どのように対処してきたのでしょうか?

Wuestefeld: ある社員から、プロセスが"あまりにも非人間的だ"、という不満を出されたことがありました。すべての評価のバランスを取った最終結果がアルゴリズム的に生成されるものだからです。TSSによって — 実際にはどのプロセスでもそうですが — よい評価を得られなかった人の中には、問題を自覚して改善方法を模索するのではなく、評価プロセスに対して不満を述べる人もいるでしょう。

実はこれこそが、私の"望んでいる"問題なのです。結果の悪かった人たちには、その不満をチームにフィードバックしてほしいのです。それによって勤務体制を改善することもできますし、自分がもっと活躍できる別の企業に転職することも可能になります。

InfoQ: どのようなメリットがありましたか?

Wuestefeld: 業績評価や報酬の決定は、これまでは、かなりストレスを覚える業務でした。1週間おきにメンバが部屋に来て、ドアを叩いて、昇給を要求するような状況だったのです。100パーセントの公平性を目指して、尊敬を集める上級社員らとの調整会議を実施したとしても、そのプロセスが不透明で恣意的だと受け取られてしまいます。

TSSを使うことで、私のチームでは、給与決定のための業績評価は問題ではなくなり、四半期毎に15分程度で自然に行えるようになりました。公平性と透明性は100パーセントであると認知されています。

作者について

この記事に星をつける

おすすめ度
スタイル

BT