技術分野の従事者には、管理職のキャリアだけが目標ではない。Fabiane Bizinella Nardon氏は、管理職から技術職に復帰してスタッフプラスエンジニアとなり、スタッフプラスフレンドリな会社を設立した人物だ。氏はQCon London 2022で、"A CTO That Still Codes: My Tortuous Path to the Staff Plus Engineer Role"と題する講演を行った。
Nardon氏が自分の進むべき道を決めたのは、新たなプロジェクトを経験するために1年間のサバティカルを取得した時だった。
自分が本当にしたいことを確信できるまでは、自己分析と実験の繰り返しでした。その1年間、いくつかのプロジェクトに参加して、起業、海外生活、AIやビッグデータを使用した開発などを経験し、いくつかのテーマに関する講座を受講しました。とにかく、自分が何をしたいのかを理解したかったのです。
1年間のサバティカルは、氏が技術職に戻ってスタッフプラスエンジニアになることを決意する上で、重要な意味を持つ期間になった。
Nardon氏は管理職として、リーダシップのトレーニングを受けていたのだが、このトレーニングがスタッフプラスの役割をこなす上でもプラスになった。氏が学んだのは、例えば、より適切なフィードバックを返す、本当の望みが何かを理解するように耳を傾ける、不満を並べ立てる相手に対して寛大になる、技術が専門でない人たちに技術的な説明をする、といったことだ。
管理職のキャリアが自分に向いていない、となぜ分かるのだろうか?Nardon氏はその根拠をいくつか挙げている。
- コーディングをする言い訳をいつも探している
- 何でも自動化しようとする
- 実を言うと会議が嫌いだ
ひとりでコーディングしていたのでは、チームのコードを優れたものにするようなインパクトは生まれない、とNardon氏は言う。スタッフプラスエンジニアとしては、チームがよりよくなる支援をするべきだ。自分の作ったプロセスに従うことで、模範を示す必要もある。自分が従わなければ誰も従わないだろう、とNardon氏は指摘する。
スタッフプラスエンジニアは、チームにただひとりの存在である場合が多いので、リーダであることの孤独にも耐えなくてはならない。そのためにNardon氏は、相談できる人を組織の中で見つけることを提案する。話をすることで、解決策が見つかるかも知れない。
もしも、コーディングを一生続けられるような会社を作ったら、どうなるだろう?Nardon氏は、技術チームを小規模に保つこどでマネジメントのオーバーヘッドを制限し、会社内にフィットする特別なプロファイルを持った人たちを採用して、スタッフプラスフレンドリな会社を設立したことを説明した。氏の会社では、十分な報酬とステータスを提供することで、技術職に留まるように動機付けている。スタッフプラスの役割をサポートする優れたポリシを持っている企業は、自分たちの経験を世界規模で公開して、この役割にある人たちの認知の拡大とステータス向上に貢献してはどうか、とNardon氏は呼び掛けている。
技術専門職にとって何が本当に重要なのかを理解し、その価値を認める必要がある、とNardon氏は述べて、企業の価値と技術者の価値を一致させるように提案する。
講演の最後にNardon氏は、我々は今、かつて経験したことのないスキル不足の時代に生きており、将来的に大きな課題になるだろう、と述べた。最も経験豊富なエンジニアたちを失うわけにはいかないのだ。
Fabiane Bizinella Nardon氏は、2022年5月10日~20日のQCon Plusでも講演する予定である。