リモートワークからハイブリッドワークへの移行を契機として、パンデミック以前はうまくいっていた(あるいはうまくいっていなかった)ことが今はうまくいかない、という理解の下、企業によるオフィスデザインの見直しが進められている。さまざまな働き方やコラボレーション手法にとって都合のよいように、オフィス空間を再設計する必要があるのだ。
調査では、パンデミックを理由とする完全リモートワークから、オフィス作業、在宅就業、第3の場所に勤務時間を分割するハイブリッド構成への移行に伴って、企業のオフイス空間の使い方や目的も変化する必要がある、ということが示されている。異なるロケーション間での勤務時間の分割は、作業の性質やコラボレーションの必要性など、さまざまな要因によって影響を受ける。その中で企業は、オフィスのあり方や場所を再評価すると同時に、移行の一環としてオフィスのデザインの見直しを進めているのだ。
"How hybrid work is revolutionizing our office spaces"と題したWorld Economic Forumの記事では、COVID-19によってハイブリッドワークが一般的になったことが、従来のオフイスレイアウトの根本的な見直しにつながっているとして、その実例を紹介している。
- オフィスは移動可能なパーティション、OAフロア(raised floor)、より多くのディジタル画面を備えた、フレキシブルなものへと再設計されつつある。
- CMR(Collaborative Meeting Room)があることで、見たり聞いたりする上でのストレスはなくなるが、会議テーブルが交渉において重要な役割を果たす点に変わりはない。
- 巨大な会議テーブルはなくなり、大きな画面が使われるようになる。
ハイブリッドワークのためのデザインには、これまで標準的であったものとはまったく異なるアプローチが必要になる。パンデミック以前のオフィスのデザインには問題があった。ハイブリッドワークへの移行は、意図を持ってオフィスレイアウトを再考し、見直すための機会なのだ。
パンデミック以前のオフィスには、不満の声が大きくなっていました。パンデミック以前のある調査では、85パーセントの人々が、自分たちのオフィス環境に満足していない、と回答しています。コラボレーションの向上か、コストの削減か、いずれの理由にせよ、オフィスは間仕切りのない、密度の高いものになり、一人当たり5平方メートルにも満たない場合もありました。その結果として、騒がしい、気が散る、不健全な職場も少なくなかったのです。さらに、オフィス作業者の40パーセントが不十分な照明に悩まされていましたし、室温は単に不快なだけでなく、女性のフォーマンスを妨げるようなことも日常的にありました。
WEFの記事はさらに、
同じ机を隙間なく一列に並べるのは止めて、すべての作業者や作業スタイルに合うように、もっと多様で柔軟性があり、個別にコントロール可能な環境に移行する必要があります。会議の合間に効果的かつ集中的に作業する場所、自宅で仕事ができない、あるいはしたくない人のための場所は、今後も十分に確保する必要があります。静かな部屋、予約可能なデスク、軽作業を行う空間があって、照明や温度や音響を個々でコントロールできれば理想的です。
この移行には、デスクやコラボレーションスペースを予約する、誰がオフィスにいて誰がリモートで在席中なのかを可視化する、といった、ハイブリッドワークのメカニズムを実現するテクノロジの裏付けが必要となる。
ioffice+SpaceIQの記事"The Best Hybrid Office Spaces In The World "では、8つのオフィス空間のデザインを紹介した上で、それらがいかにコラボレーションとハイブリッドワークのために最適化されているかを説明している。記事によると、ハイブリッドオフィスで重要なのは次のような項目だ。
- コラボレーション空間とプライベート空間の混在
- 作業内容に応じて使用可能な多目的領域
- 再構成の容易な家具
- 高品質のカンファレンスルームテクノロジ
- どこからでも作業場所を検索し、手軽に予約できるテクノロジ
Diane Gayeski氏も同じようなことを、"5 layout ideas for your hybrid office"というRobinブログの記事に書いている。
- ホットデスク・ハングアウト
- マーケットプレイス
- カフェ・コラボレーション
- 搭乗手続室(get-on-board room)
- 家から離れた家(home-away-from-home)
PWC Australiaによる記事 "Changing Places: Designing hybrid offices that work"では、仕事場をデザインする場合に考慮すべき"4つのC"を取り上げて、デザインとポリシ決定の両面に影響する可能性のあるさまざまなシナリオを紹介している。
未来のオフィスは違うものになるでしょう。仕事に関するすべての活動に適用する必要がなくなる代わりに、自宅ではうまくできない作業のための場所を提供するようになります。ハイブリッドワークをうまく進化させて受け入れるためには、企業側が4つのCを考慮する必要があるでしょう。
- Concentration: 個人作業と集中
- Collaboration: ブレインストーミング、チームワーク
- Communication: トレーニング、交流(socialising)
- Contemplation: 振り返り、リラックス
Salesforceの記事では、SlackのCEOで共同創業者であるStewart Butterfield氏の言を引用している。
これはすべての企業にとって、自らを改革し、仕事をより柔軟で包括的、かつ生産的なものにするための、一世代に一度のチャンスなのです。