8つのプロジェクトが卒業(graduation)し、14のプロジェクトがincubationステータスに到達したということが、KbeConEU + CloudNative Conference CNCFで発表された。このステータス変更は、プロジェクトの方向性を確認するとどもに、プロジェクトに対するコントリビューションや採用を広く呼び掛ける目的で行われている。incubationに到達したのは、ArgoCD、OpenTelemetry、gRPCなどのプロジェクトだ。
卒業基準(graduation criteria)に説明されているように、CNCFプロジェクトには"sandbox"、"incubating"、"graduated"という成熟度レベルがあり、それぞれがCrossing the Chasm図のInnovations、Early Adopters、Early Majority層に対応する。プロジェクトがincubationステージに到達するには、sandboxステージの要件に加えて、コミッタの数が十分にあること、バージョンスキームが明確であること、仕様に対して少なくともひとつのリファレンス実装が存在することなど、いくつかの条件を満足する必要がある。
基調講演では、CNCFにおける新規卒業プロジェクトの発表に続いて、新たにincubation状態になったプロジェクトが紹介された。
Chaos Mesh: 元々はオープンソースの分散データベースTiDBとして開発されたが、現在はKubernetes環境におけるカオス実験をオーケストレーションする、汎用的なカオスエンジニアリングプラットフォームとして、約60の組織で採用されている。StressChaos、DNSChaos、JVMChaos、AWSChaos、GCPChaos、HTTPChaosなどを使えば、より包括的なシミュレーションが可能だ。Microsoft Azureは自社のSaaSソリューションにそれを組み込んでおり、コンシューマによるAKSクラスタへの障害インジェクションが可能である。
Knative: サーバレスコンテナの運用に関するソリューションを提供し、ネットワークの詳細やゼロサイズまでのスケーリングを処理する。さらに、宣言的イベント接続によって計算処理とデータストリームを結合するイベント機構を実装することで、最新のアプリケーション構築を可能にしている。
Flux: Kubernetesエコシステムの標準的なプラクティスとツーリングをサポートすることにより、完全な継続的デリバリ(CD)プラットフォームをKubernetes上に提供する。Technology RadarのAdoptカテゴリでは、Helmに次ぐ第2のテクノロジであった。
Longhorn: さまざまなタイプの物理ストレージデバイスやインフラストラクチャ、アーキテクチャ上で動作するように設計された、 Kubernetesの分散ブロックストレージシステム。
OpenTelemetry: テレメトリデータの計測、生成、収集、エクスポートを対象とするツール、API、SDKのコレクション。
Dapr: pub/sub形式のプリミティブセット、状態管理、機密管理、イベントトリガ、安全で信頼性の高いサービス間コールなどを開発者に提供する。
Cilium: eBPFを使用してKubernetesのCNIおよび拡張ネットワーク層として機能することにより、クラウドネイティブ環境のネットワーク、セキュリテイ、可観測性を提供する。
Cloudevents: サービス、プラットフォーム、システムを越えた相互運用性を提供するために、共通形式でイベントデータについて述べた仕様。
Operator framework: Kubernetesネイティブなアプリケーション(オペレータ)を効率的、自動的に、スケーラブルな方法で管理するためのツールキット。
Cri-o: Open Container Initiativeの使用を可能にするようにデザインされたContainer Runtime Interfaceの実装。
Falco: Kubernetes、Mesosphere、CloudFoundryに侵入と異常の検出機能を提供する、ランタイムセキュリテイプロジェクト。
NATS: クラウドベンダ、オンプレミス、Webとモバイル、デバイスのさまざまな組み合わせにおいて、セキュアな通信を実現するメッセージシステム。
gRPC: いくつもの環境をサポートする、最新のリモートプロシージャコール用フレームワーク。
ArgoCD: Kubernetes用の宣言型GitOps継続的デリバリ用ツール。
CNCFはKubeConEUで、活動開始から8年でメンバ数800のマイルストンに到達したことを発表した。graduatedステータスに必要な成熟度に到達する新プロジェクトが継続的に現れることで、エコシステムはますます堅牢になり、クラウドネイティブテクノロジを求める組織にとってのワンストップショップとなっている。graduateあるいはincubatingステータスにあるプロジェクトの数が40を数えていることや、他のエコシステムも同様にクラウドに賭けていることから、クラウドネイティブの将来像は極めて明るいと言ってよいだろう。