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トップダウンとボトムアップを組み合わせた心理的安全性の高い環境づくり

心理的安全を実現するにはリーダーシップが不可欠だが、対人関係のリスクを冒しても大丈夫だということを、率先して示す必要がある。チームワークショップにおいてコミュニケーション能力でリーダーシップを補えば、人々は率直に発言し、失敗しても大丈夫だと思える。

Lean Agile Scotland 2022にて、Jitesh Gosai氏 は心理的安全性に関する経験を発表した。

心理的安全性の考え方を応用することで、チーム内で知らないこと、理解していないこと、失敗したことを率直に話すことができると、Gosai氏 はLearnings from Applying Psychological Safetyで説明している。信頼と安全な空間づくりは、あらゆるチームにとって不可欠なものだ。人々が自分のコンフォートゾーンから抜け出し、罰や恥ずかしさを恐れずにリスクを冒せるようにすることは、人々が発言できるようになるために非常に重要だ。人は、対人関係のリスクを冒しても罰せられたり恥をかかされたりしないと感じる必要がある。

Gosai氏 はチームで仕事をするなかで、コミュニケーション能力が一様ではなく、あるメンバーは他のメンバーよりもはるかに優れているとわかった。

チームがより効果的にコミュニケーションを取ることができれば、メンバーも積極的に発言するようになるのではないかと考えたのです。

そこで、トップダウンで対人関係のリスクを冒すようなリーダーシップを身につけるとともに、ボトムアップでチームメンバーに効果的なコミュニケーションを取るスキルを身につけるというアプローチを考案した。

ボトムアップアプローチを始めるにあたり、アクティブリスニング、質問力、フィードバックの受け方などのスキルを向上させるため、部門内のさまざまなチームを巻き込んだ一連のワークショップを開発・運用した。

これらのワークショップの目的の一つは、各ワークショップが独立しているので参加するチームを選ぶことができ、また、実際にスキルを身につけ、すぐに使える価値のあるものを持ち帰ってもらうことでした。

チームに対する最初の調査では、ワークショップへの参加と学習効果について高い評価が得られ、参加者のコミュニケーションスキルの向上という点でも成功を収めた。しかし、彼らが得た新しいスキルを活用できているかどうかについては、あまりよくわからなかった。そこで登場するのがトップダウンアプローチだ。チームと協力することで、人々が新しいスキルを使って発言を促すことに繋がるとGosai氏 は言う。

心理的安全性のレベルが上がると、リーダーたちは問題の数が減ると期待するが、まったく逆のことが起こると Gosai氏 は言う。

心理的安全性が高いチームは、より多くの問題を報告する傾向があるため、心理的安全性が低いチームと比較してより多くの問題を抱えているように見えます。

この結果から、リーダーたちは失敗しても許されるようになれば、人は故意に失敗を増やすようになるのでは、と思うかもしれない。しかしこれには、人というのはそもそも失敗が好きではない、ということが考慮されていない、とGosai氏は説明する。

幼い頃から「失敗は悪いこと」と教えられているので、計画通りにいかないと気分が悪くなり、失敗を起こさないようにしようとするのです。なので、チームリーダーが心配するような、失敗しても全く気にしないといった態度にはならないでしょう。稀にこのような考え方をする変わった人もいますが、チームメンバー全員がこのような行動を取ると考えるのは大げさです。それに、もしチームの中にこのような態度の人がいたら、大惨事が発生するよりも早く知っておいたほうがいいでしょう。

InfoQ では、心理的安全性についてJitesh Gosai氏にインタビューを実施した。

InfoQ:トップダウンとボトムアップを組み合わせた理由は何でしょうか?

Jitesh Gosai氏 : この2つのアプローチは、共生関係にあります。チームリーダーは、対人関係でリスクを冒しても安全であることを示すようになります。同時に、チームメンバーは、自分自身をよりはっきりと表現するためのコミュニケーションスキルを身につけ、対人関係のリスクを冒すことに自信を持てるようになります。

結果として、リーダーが「わかること、わからないことを共有してほしい」と訴えたとき、チームメンバーはそのための必要なスキルを身につけるようになります。

InfoQ: このような取り組みを始めたきっかけは?

Gosai氏 : 対人関係のリスクを冒すことは、さしあたりワークショップの焦点にせず、あると良いな程度に考えました。対人関係のリスクは、チームリーダーのサポートがあれば、後から導入することも可能だろうと。まずは、客観的にチームのコミュニケーション能力が向上した、と言えるようにしたかったのです。これは、彼らをワークショップに送り、参加者アンケートによってスキルが向上したかどうかで確認しました。

次の段階では、チームリーダーたちと協力してトップダウンアプローチを発展させ、彼らの振る舞いや言葉遣いが対人関係のリスクテイクをどのように助長したり抑制したりするのかを理解する手助けをする予定です。また、チーム内の心理的安全性のレベルをどのように測定するかということも考えています。そこからチームと協力して、コミュニケーションスキルが対人関係のリスクを冒すのに役立つことに結びつけ、結果として何もひどいことは起きない、むしろその逆であることを示したいのです。

InfoQ: 心理的安全性に取り組もうとしたとき、どのような問題があったのでしょうか。

Gosai氏 : チームリーダーは、こういった率直な発言が、チームの動きを鈍くしたり、話し合いでひどく緊張させたり、日常業務とは関係のない話題で議論を生むのではないかと心配することがあります。しかし、チームメンバーも人間です。身近な出来事の影響を受けるものです。

彼らにベストな思考をさせたいのであれば、それは、彼らの家族と同じぐらい時間を分かち合うような人たちと、そういった問題について話し合う場を与えるということかもしれません。しかし、リーダーは、組織の規則に基づいたお互いの距離感、その境界線を越えた場合の好ましくない事態、一線を踏み超えてしまったときの報告の仕組み、といったことを決めておくべきです。

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