スタンフォード大学による、"2024 AI Index Report"公開：AI規制の成長と生成AI投資

原文リンク(2024-05-28)

スタンフォード大学 の人間中心人工知能研究所（HAI）は、2024年AIインデックス年次報告書を発表した。同レポートは、2022年以降の生成AI投資の8倍増など、AIのトップトレンドを明らかにしている。

AI Indexレポートは、政府、産業界、学界の協力のもと、学際的なチームによって編集されており、今年で7回目となる。本レポートには9つの章があり、編集者は、米国におけるAI規制の数が昨年1年間で56.3％増加したこと、モデルのトレーニング費用、特にLLMの費用が近年「著しく」増加していること、生成AIへの投資が増加しているにもかかわらず、AIへの民間投資全体は2021年以降減少していることなど、本インデックスからいくつかの重要なポイントを抽出した。インデックスの共同ディレクターであるRay Perrault氏とJack Clark氏は、次のように述べている。

2024年インデックスは、これまででもっとも包括的なものであり、AIが社会に与える影響がかつてないほど顕著になっている重要な瞬間に到達しました。今年は、AIの技術的進歩、このテクノロジーに対する一般大衆の認識、そしてその発展を取り巻く地政学的ダイナミクスといった本質的なトレンドをより広範囲にカバーするため、対象範囲を広げました。これまで以上に多くのオリジナルデータを掲載した本号では、AIのトレーニングコストに関する新たな推定値、責任あるAIの展望に関する詳細な分析、AIが科学と医療に与える影響に特化した全く新しい章を紹介しています。

報告書は9つの章で構成されている。研究開発、技術的パフォーマンス、責任あるAI、経済、科学と医療、教育、政策とガバナンス、多様性、世論である。科学と医学の章は今年新たに追加されたもので、科学・医学研究におけるAIモデルの役割の高まりを取り上げ、より効率的なソートアルゴリズムを生み出したDeepmind社の"AlphaDev"モデルなどを紹介している。また、FDAが承認したAI関連医療機器が2021年以降12.1％増加したことにも言及している。

研究開発の章では、基礎モデル、特にLLMのトレーニングコストについて掘り下げている。報告書は、「これらのコストに関する詳細な情報はまだ乏しい」と指摘し、AI研究機関Epoch AIと協力してコストを試算した。このレポートには、トレーニングコストが時間とともに指数関数的に増加していることを示すグラフが掲載されており、Googleの初代モデル「Transformer」のトレーニングコストは1,000ドル未満であったと推定されるのに対し、GPT-4やGeminiなどの直近のモデルのトレーニングコストは1億ドル以上かかっているという。

時間経過に伴うモデルのトレーニング費用。画像出典：2024年AI指数レポート

報告書によると、このようなトレーニング費用の増加は、モデル開発から大学を「事実上、排除」している。報告書のデータによると、2023年には、産業界の研究所が51の「注目すべき」モデルを生み出したのに対し、大学からは15のモデルが生み出されたという。一方、2016年以前は、大学も産業界と同数かそれ以上のモデルを生み出していた。一方、産学共同研究は2023年に21の注目すべきモデルを生み出し、これは過去最高を記録した。

分野別の注目モデル 画像出典：2024年AI指数レポート

JVM Weekly Newsletterの編集者であるArtur Skowroński氏は、LinkedInでこのレポートについて以下のように記述している。

何が起きているのかを理解したいですが、それを追い続ける時間はない（最近私もこのようなことを考えましたが、この発表の量とペースでは、特に何かを検証したいときには非常に難しいです）人にとっては、必読の書です。500ページにも及びますが、アクセスしやすく、操作性の高い解像度で、各トピックが概要から細部に至るまで紹介されています。

レポート全文はAI Indexのウェブサイトからダウンロードできる。レポートの生データと図表はGoogle Driveで公開されている。本レポートはCreative CommonsAttribution-NoDerivatives 4.0 Internationallicenseの下でライセンスされている。