大規模組織でのアジリティを維持するために、ソフトウェアチームは技術的・組織的ソリューションを用いた依存関係の軽減や作業の自律化ができる。Fabrice Bernhard氏によると、コラボレーション技術の活用で、チームでの分散型ネットワークが構築が可能だ。リーダーは、顧客が納得できる製品提供を目的とした問題解決文化を築くことでチームをサポートし、チーム力を強化できる。
Fabrice Bernhard氏は、FlowCon Franceでテクノロジーを駆使した組織ネットワークについて語った。
Bernhard氏は、テクノジーを駆使した組織ネットワークとは、作業がソフトウェアチームに分散されることで各チームが自律性と権限を高いレベルで保持しつつも、分散コラボレーションを活用した技術によって作業の再統合が可能になる組織だと定義した。
組織の構成がn人の場合、n(n-1)×2通りの直接的なやりとりが考えられる。交流パターンの数は、人数の増加より増え幅が大きくなる。つまり、原則として「人数と交流パターン数」は比例しないのだ、とBernhard氏は言う。
組織規模の増大に伴い、チーム間で依存関係が大きくなると、コミュニケーションを頻繁にすることで対処を図ることが多い。Bernhard氏は、自律したチームにおける人員数と交流パターンのバランス調整に向けたアプローチを変えることを提唱した。
Jeff Bezos氏の対応はその真逆で、意外とも思えるものだった。コミュニケーションの必要性を減らすことで、調整を行うのだ。Bezos氏の対応でチーム間の依存関係を減らすには、技術的・組織的ソリューションに工夫を凝らす必要がある。
テクノロジー以前にチームは人である、とBernhard氏は言う。大規模組織でチームをサポートするには、優秀なチームリーダーへの投資が必要だ。
時間をかけてわかったことですが、優れたチームリーダーは有能で、思いやりや尖ったところがあります。「尖り」の定義は、マネジメント書として非常に優れた『仕事に関する9つの嘘』にある以下の定義を使っている。「尖った人は、磨きのかかった顕著な才能が1つか2つはあり、世間に名を馳せているものだ」
Bernhard氏は、能力や思いやりや尖ったところのあるリーダーはチームをサポートし、指揮を高めることができると述べている。体系的にチームをサポートするには、問題解決文化の構築が欠かせない。具体的には、問題について協議することをよしとし、早期にかつ頻繁に問題に気付くための指標を設け、問題の分析や解決の方法を全員に教えるのである。
大規模プロジェクトでチームの自律性を実現するためのテクノロジーの活用例として、DevOpsのベストプラクティスの採用が挙げられる。依存関係の多さに遅滞することなく、顧客に価値が提供できるようになると、Bernhard氏は語った。重要な要素には、サービスアーキテクチャ、GitHubのようなコラボレーションプラットフォーム、自動テストや自動デプロイがある。こうしたテクノロジーの活用でチーム間の依存関係を減らし、大規模での継続的デプロイが(再び)可能になる。
Bernhard氏は、自身のチームに見られたメリットに言及したが、それは、アジャイル思考やリーン思考の目的である「意義のある成果を世に提供する環境での作業を通じ、顧客の納得できる製品の提供すること」に立ち返るものであった。チームが素晴らしい成果を上げ、価値を提供できる方法を用意することは、個人の成長とビジネスの両方のためになる、と付け加えた。リーンカルチャーでは、チーム内での人材育成が加速し、また、顧客の問題解決への工夫を凝らした解決策を思いつきやすくなっている、と締めくくった。